2026年 03月 04日
グラム染色quiz
菌種 | 大きさ | 角と先端 | 染色性 | 備考 |
腸内細菌目 | 大きい(太い) | やや丸いか角ばっている | 濃く一様 | 長軸上に分裂 溶血するものもある |
Proteus, Morganella, Serratiaなど | 腸内細菌目と非発酵の中間 | やや角張っているが、多型性を取る | 染色性は良いことが多い | 溶血するものもある 鞭毛が目立つものもある |
非発酵菌 | 細い | 少し先細りあり | 腸内細菌より薄く一様 | 柵状に分裂 湾曲した形態 好気ボトル |
Fusobacterium nucleatum Capnocytophaga | Filament状 | 先端先細り | 薄い・若干のむらあり | 細長い針状 喀痰で認められればほぼこれら |
その他嫌気性菌 | 多型性に富む | 多型性に富む | 一様でなく、グラム陽性にも陰性にも染まることもある(Gram variable) | グラム陽性と陰性が集簇して認めれる シート状のものも 嫌気ボトル |
HACEK group Acinetobacter | 小さい | 先細りは目立たない | 薄い | 小型、莢膜が目立つものも |
Moraxella Acinetobacter | 球桿菌で大きめ | まるい | 染色性は一様で非常に良い | 双球菌 |
Neisseria Acinetobacter | 球桿菌で小さめ | まるい | 染色性は一様で非常に良い | 双球菌 |
上記表を参考に菌名を考えてください。



1:ほそめ、染色性は一様。先端が先細り、柵状の増殖→緑膿菌
2:細め、長めと短めが混在。先端はやや丸いか?→大腸菌
3: 太め、染色性は非常によく一様。先端は角張+→大腸菌
4:太め?短め、染色性は非常によく一様。先端は丸い〜角張あり→Klebsiellaと思わせて大腸菌
5:嫌気ボトル。莢膜で周囲が抜ける。染色性はよく一様。太め→Klebsiella pneumoniae
6:球桿菌、染色性は非常によく一様。→Acinetobacter baumannii complex
7:多型性強い。染色性はよく一様。一部ヒゲみたいなものが周囲に見える(いや、このスライドにそんなのある?)→Proteus mirabilis
8: 嫌気ボトル。グラム陽性桿菌。形態から一撃→Cutibacterium acnes
9: 貪食像の目立たない染色性の悪い(儚い)小型のグラム陰性桿菌が散見→Haemophilus influenzae
10:染色性が極めて良いグラム陰性双球菌。貪食像も目立つ→Moraxella catarrhalis
11: 周囲が抜ける(halo様)のグラム陽性双球菌。グラム陰性に抜けるものもある→Streptococcus pneumoniae
2026年 02月 25日
Citrobacter freundii complex
70代女性。卵巣癌に対して化学療法が開始されましたが、貧血・腎障害の進行があり、酸素需要も増大していき、化学療法開始5日目にICUへ入室となりました。腹水貯留も著明で、透析療法を開始しましたが、血圧が極めて低く、カテコラミン開始。その後カテコラミン需要は増えていったため、血液培養採取の上で、血球減少も著明であったことからFN(Focusは腹水?腫瘍内?)としてMEPMが開始されましたが、翌日1/4本好気ボトルから以下のような菌が検出されました。


質量分析の結果からCitrobacter freundii complexと同定されました。Citrobacterは、ヒト・動物の腸管内及び自然界に広く分布する腸内細菌目の一つです。主に尿路感染や胆道系感染症、術後創部感染の報告がなされています。
Citro- citrus (柑橘類→クエン酸(で増殖可能な))
-bacter 桿菌
Freund- (August Freund(トリメチレングリコールがグリセリンの発酵で生成されることを発見)を称えてこの菌を分離したオランダのBraakによって命名)
-ii 〜の、of
この菌等は、遺伝子学的相同性から、C. freundii, C. braakii, C. gillenii, C. murliniae, C. rodentium , C. sedlakii , C. werkmannii, C. youngaeをまとめてCitrobacter freundii complexとまとめられ1、外注検査での結果もそのように帰ってきます2。また、質量分析の結果もその中で割れることが多く、今回も高い数値でC. freundiiとC. braakiiが2菌がhit する結果でした。C. freundiiでは硫化水素産生株がvariableであり(今回は陽性)、硫化水素産生株ではSalmonellaとの鑑別が必要となります。形態その他に関しては、他の腸内細菌との区別がつかないのは写真の通りです。C. freundiiは染色体性にCMYという誘導性のampCを産生します3。一方でC. sedlakiiはclass Cではなく、sed-1というclass A beta-lactamase産生菌で4、 ampDとsed-1の制御により3世代セファロスポリンの感受性が決められるという論文も出ていますが5、検出頻度の最も高いと考えられるC. freundiiに絞って考えていきたいと思います。なお、Citrobacter koseriはCKOというclass A beta-lactamase産生能を有しており、感受性パターンが異なることに注意が必要です6。また、C. amalonaticusのcdiAもsed-1同様のclass Aで、誘導性が確認されていますが7基本的にnarrow spectrumのみの分解能のようです8。

Ref 6.

Ref 8.
ampCは、class Cのβ-lactamaseであり、さまざまな遺伝子のtypeが報告されていますが、基本的にはペニシリン・1-3世代セファロスポリン・セファマイシンを分解し、クラブラン酸の影響を受けにくいという特徴を持っています。つまり、腸内細菌と思ってESBLまでカバーを、と思って外す可能性があるのがEnterobacter同様この菌の治療の特徴と言えるかと思います。また、単純な算数の計算ですが、これらのβ-lactamaseは加水分解能(分解効率)x産生量で耐性化は規定されます。

CVAの影響を受けにくい、というのは重要な点ですが、他のBLIに関してはどうでしょうか? それを示したのが下の表です。Tazobactamは活性がないのが重要で、それ以外の新規のBLIはclass Cの活性がある→つまり新規のBL/BLIはclass Cでは問題なく使用できるという認識になろうかと思います。

Ref 9.
で、ここからが次のstepです。菌の産生する酵素はその多くが制御遺伝子などで産生が制限されています。これは不要な酵素をたくさん出すとその分そちらにエネルギーを回さなければならないので、菌が生きていくためには非常に理にかなったものです。一方でその制御遺伝子が異常をきたしている場合には、酵素を非常に多く産生できるような株となることができます。

Ref 10
その上でCitrobacter freundiiが有するampCは先ほど記載した通り、誘導性を有しています。ここでいう誘導性というのは“特定の抗菌薬”に晒された際に、その産生能力が変化(増加)するということを示します。その特定の抗菌薬、というのが下の表のinducerというものになります。

Ref 11-14
つまり、inducerであるAMPCやCMZを使用した場合には、菌株が誘導され、たくさんのampCを産生できる株に変わってしまう可能性があります。ではCTRXで治療を開始した場合はどうでしょうか?non or weak inducerであればampCの産生能を増加させることはほとんどないはずです。しかしながら前述のCLSIでは以下のような記載がなされています。

Ref 8.
上記を日本語で抽出すると、3世代セファロスポリンで治療していると数日で誘導性のあるampCの脱抑制によって効果がなくなる、という記載です。どういう意味でしょうか?
実はC. freundiiでは、この制御遺伝子の変異が自然発生す可能性が高いことが実験室レベルですがわかっております。他に同様の傾向を示すものとしてEnterobacter cloacae complex, K. aerogenes, Hafnia alveiがあげられます

Ref 15.
つまり、菌として最初検出されたものの大部分はampCが制御されているものである一方で、ampC産生を効率よく産生できるものが高頻度に隠れている、ということです。その上でCTRXで治療をすると、ペニシリン、1-3世代セファロスポリン、セファマイシンを効率よく分解できる株が残って増える=selectionがかかるということで、治療の失敗につながることが示唆されます。

Ref 10.
最後にPIPC/TAZは使っていいのか?ダメなのか?に関して考えたいと思います。上の表でPIPC/TAZはweak or non-inducerなので、基本的に誘導は惹起しません。一方でcarbapenemや4th cephalosporinと違い、unstableのカテゴリーとなっています。そのため、治療が失敗する可能性はカルバペネムと比べて若干上がるのでは?ということが示唆されるかと思います。IDSAのガイドラインでもPIPC/TAZは侵襲性の高いampCの場合には推奨せず、carbapenemの方を推奨しています16。ただ、PIPC/TAZ vs MEPMでのoutcome比較を示したMERINO-2 trialは微生物学的失敗(治療開始後3-5日での陽性持続)はPIPC/TAZで多かったものの、再発(5日以降の菌検出頻度)はMEPMで多いという当初考えられたものとは異なる結果でした。Pilot studyでもあり、かつ症例数も少なかったこともあり、歯切れの良い答えを出すのはまだまだ難しいと思います17。
なお、本症例は血液培養陽性の報告を受けてからCFPMへ治療変更し、血球回復を待っているところです。
最後に今回取り上げなかったCitrobacter koseriは、耐性機序こそ大きな問題とならないものの、マクロファージ内で生存するのみならず、ミクログリアやマクロファージをトロイの木馬のようにしてcentral nerve systemに侵入して、新生児の多発性脳膿瘍を引き起こすことができるような菌のようです18,19。知らなかったよ。

1: 微生物プラチナアトラス 第2版 MEDSi
2: 株式会社LSI インフォメーション https://www.medience.co.jp/clinical/information/parts/pdf/17-24.pdf
3: Antimicrob Agents Chemother. 1996;40(1):221-4. PMID: 8787910
4: Antimicrob Agents Chemother. 2001;45(8):2287-98. PMID: 11451587
5: Antibiotics (Basel). 2025;14(8):823. PMID: 40868019
6: FEMS Microbiol Lett. 2006;254(2):285-92. PMID: 16445758
7: Microb Drug Resist. 1995;1(4):285-91. PMID: 9158798
8: CLSI M100 ED36:2026 Performance Standards for antimicrobial susceptibility testing
9: Clin Microbiol Rev. 2020;34(1):e00115-20. PMID:
10: ケースで学ぶ抗菌薬選択の考え方 医学書院
11: J Pediatr Pharmacol Ther 2011;16(1):23-30. PMID: 22477821
12: Clin Micribiol Infect 2002;8(12):823-5. PMID: 12519358
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15: J Antimicrob Chemother 2018;73(6):1530-1536 PMID:29566147
16: Clin Infect Dis. 2024:ciae403. PMID: 39108079
17: Open Forum Infect Dis. 2021;8(8):ofab387. PMID: 34395716
18: J Immunol. 2009;183(9):5537-47. PMID: 19812209
19: Arch Argent Pediatr.2009;107(6):553-6. PMID: 20049403
2026年 02月 19日
Chryseobacterium indologenes; indoleを産生する黄金色の桿菌
今回はcolonyの写真がない。しかも喀痰から検出されたのみで、どんな菌やったっけ?ということでまとめただけです。
Chryseo- 黄金色の
-bacterium 桿菌
indolo- インドール
-genes 産生する
以前血液培養で陽性だったグラム染色の写真は以下のようになっています。

今回は症例提示なしでこの菌の説明となります。この菌は土壌や水まわりにいる環境菌で、様々な食物から分離されるとMandellには記載されています1。以前はFlavobacterium indologenesと呼ばれており、renameされて今の名前になっています。このブドウ糖非発酵菌はグラム染色上はElizabethkingiaとともに記載されており、長めで若干曲がっており、フィラメント状のこともあるとのことです1。今回痛恨なのはこの菌が色素産生性のものであり、コロニーの写真がないので、また今後出くわしたら写真を撮っておこうと思っています。

Ref 2. 前回のSphingomonas paucimobilisと同じようなところに名を連ねている
病原性は低いという記載が論文の枕詞で記載されていることが多く、移植患者などでの報告もあります3,4。Pubmed検索するとneonateやinfantでのbacteremiaの症例報告が目立ちますが、院内感染の報告がほとんどですが市中感染も認められることが台湾から報告されています5。Focusに関しては中国からの単施設研究の報告では、腹水>尿>喀痰の順で検出されたという報告もありましたが6、台湾や韓国の単施設研究のbacteremiaのcase seriesではprimary bacteremia or CRBSIがほとんどを占めていました7,8。そのほか人工呼吸器関連肺炎の報告は他の非発酵性グラム陰性桿菌と同様に多く、literature reviewでも肺炎とbacteremiaが臨床で問題となる中心と記載されています9。なお、中国からの腹水の報告に関しては腹膜透析関連かどうかの記載はありませんでしたが、腹膜透析関連腹膜炎の起因菌としては複数の報告がなされています10。

Ref 6.
で、わざわざ今回colonyの写真も撮影していないのにこの菌を取り上げたのは、今回ってくれている研修医が小児科志望で、小児の感染報告が多いという理由に加え、この菌の多彩な耐性機序を掘り下げるためです。この菌は染色体性にINDというclass Bのbeta lactamaseを有し11、多様性はあるもののカルバペネムを含むほとんどのβ-lactam系抗菌薬に耐性です。これだけであれば通常Aztreonamには感性のはずですが、報告では完全に耐性です。

Ref 11.
それで調べていくと、この菌は他にもクラブラン酸で強い阻害を受けるCIA-1という染色体性のESBLに該当するclass A beta-lactamaseも有しているということがわかりました12。

Ref 12.
さらに2022年にはこれらに加えて染色体性にCcrAというβ-lactamaseを染色体性に有する株も認められています13。Bacteroides fraglis由来の、と本文中に記載があったのでCfiAでは?と思ったのですが、これは同一のもののようでした14。つまりこの菌は染色体性にclass Bが2つextended spectrumのclass Aを1つ有しているということとなります。これでは基本的にβ-lactamは効果が限定的なのは明らかですが、発現量などの兼ね合いとTAZでの阻害などから、PIPC/TAZでの治療奏功例も散見するのは面白いところです(多分使わないけど)15。

β-lactam系抗菌薬以外でのものとしては、前回のSphingomonas同様colistinには自然耐性(2010年のNEJMでSerratia, Proteus, S. maltophilia, Burkholderia cepaciaと並んで記載されていました)のようです15。実際にcolistinの使用がC. indologenesによる肺炎と菌血症の上昇との相関したという台湾からの疫学研究もあります14。
となると治療はcefiderocolの効かないS. maltophiliaのような治療、つまりST合剤・Minocycline・FQとなるかと思います。ST合剤に関してはdoseの記載がされている論文は見つけれていませんが、感受性は最も保たれています8。またminocyclineの感受性は担保されているようですが、gyrA mutationによるキノロン耐性は近年深刻な様相を呈しています6。いずれにせよ弱い菌なのでprimary bacteremia orカテーテル感染ならばline抜去の上でMINO or FQで治療開始、腹膜透析関連腹膜炎ならばMINO or FQで治療開始して、効果が悪ければ抜去も考慮するというのがひとまずの治療となるのではないかと思います。治療期間?まあ10日くらいするかなぁ、知らんけど。
前回のSphinogomonas paucimobilisと臨床は似通るものの、感受性パターンが全然違うのでごっちゃになりそうだけど、勉強になりました。
1: Other Gram-Negative and Gram-Variable Bacilli. Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases. 10th edition. Elsevier.
2: 臨床微生物検査ハンドブック第4版 三輪書店
3: Scand J Infect Dis. 2003; 35(11-12):882-3. PMID: 14723368
4: Pediatr Neonatol. 2022;63(1):97-98. PMID: 34503939IF: 2.1 Q2
5: Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 1997;16(8):568-74. PMID; 9323467
6: Ann Transl Med. 2021;9(8):668. PMID: 3398366
7: J Microbiol Immunol Infec. 2010;43(6):498-505. PMID: 21195977IF: 3.7 Q2
8: Infect Chemother. 2023; 55(3):322-327. PMID: 36864765IF: 2.9 Q2
9: AIDS Res Ther. 2025;22(1):53. PMID; 40410755
10: Case Rep Nephrol Dial. 2023;13(1):90-96. PMID; 37900925
11: Int J Antimicrob Agents. 2008;32(5):398-400. PMID: 18707850IF: 4.6 Q1
12: Antimicrob Agents Chemother. 2012;56(1):588-90. PMID: 22083470IF: 4.5 Q1
13: Infect Drug Resist. 2022;15:167-170. PMID: 3508250
14: Anaerobe. 2026;97:103024. PMID: 41621579IF: 2.6 Q3
15: J Microbiol Immunol Infect. 2013;46(6):425-32. PMID: 23022462IF: 3.7 Q2
16: N Engl J Med. 2010;362:1804-13. PMID: 20463340IF: 78.5 Q1


好気ボトルからのみ、というkeywordは、ブドウ糖非発酵菌を疑うきっかけとなります。ブドウ糖非発酵菌は以下のような種類のものがあり、必ず押さえておきたいのは緑膿菌とアシネトバクター・そしてStenotrophomonas maltophiliaかと思います。今回取り上げるSphingomonas paucimobilisはそのいずれでもないものとなり、コロニーやグラム染色の写真が掲載されているものもほとんどありません。
Sphingo- スフィンゴ脂質 (細胞壁にこの糖脂質を有することに由来)
-monas 細胞 (菌を示す女性接尾辞)
Pauci- 少数の、少し 英語でpaucity 少数の
-mobilis 動くことができる 英語でmobile
<すこしだけ動けるスフィンゴ糖脂質をたくさん含んだ菌>

Ref 0とより改変

この菌はもともとPseudomonas paucimobilisと呼ばれていましたが、その後1990年にSphingomonas paucimobilisとrenameされました。Mandellでは、Sphingomonas paucimobilisの病原性が低いのはendotoxinを産生しないためと考えられており、と記載がありますが、忠septic shockにはなり得ると指摘しています1。実際に台湾からの42 casesのcase seriesおよびliterature reviewでも3症例でseptic shockに至ったと記載されています2。entryとしては医療関連の菌として長らく言われており、カテーテル関連の血流感染が最も多く、術後創部感染と続き、髄膜炎や肺炎もあるようですが、entryが不明な症例はそれなりに多くありそうです。

Ref 2より
また近年のオーストラリアからの282症例の血流感染のreviewでは3、熱帯地域で多いこの感染症は、市中感染が実は一番多く、死亡率としても6%程度という結果からは、決して無視できるものではないということが見て取れます。
実は今回の症例の少し前に、当院ではCAPD腹膜炎の起因菌としてS. paucimobilisが検出された症例が経験されています。実際にpubmedでは13件hitしており、rareながらCAPD腹膜炎の起因菌としては考慮するべき菌のようです。少数ずつでliterature reviewがcaseとともに実施されており4,5、2018年には14症例のliterature reviewが実施されています6。その中ではやはりカテーテル抜去を要した症例が半数以上となり、また報告された全例が治癒しておりますが、使用されている抗菌薬はどれということもありません。

Ref 6.
それもそのはずで、感受性や耐性メカニズムに関してのまとまった報告はほとんどありません。Colistinにおそらく内因性耐性で、キノロンやセファロスポリンの耐性は獲得性だろう、という記載の論文を見つけるにとどまりました7。では菌名がわかってもempirical therapyができないのでは?ということになりますが、一応マレーシアの牧場の環境から検出されたものが近年のまとまった報告なので掲載しておきます。これを見ると、おそらくほとんどの初期投与の抗菌薬で外すことはなさそうです。しかし、aztreonamが半分耐性というのは、、、外膜の構造が普通のGNRとは違うので、porinや選択性の高いefflux pumpの影響の気が非常にしないでもないのですがどうでしょうか?

CFZ: cefazolin, CFE: cefuroxime, CFN: cefoxitin, CEFO: cefotaxime, CEFZ: ceftazidime, CEFX: ceftriaxone, CEFE: cefepime, ATM: aztreonam
Ref 8.
なお、Mandellには広域のβ-lactam, BL/BLI, セファロスポリン、キノロン・カルバペネムのほとんどが効果的、と記載されるにとどまっています。

AAC 1983;23(1):161-2 PMID: 6600908より抜粋
最後になぜこの菌の病原性が低いのか?ということを考えたいと思います。Pubmedなどでは比較的少数しかhitしませんが、一般にインターネット上で調べてみると、有害有機物を取り込んで分解するなどの効果を有しており、有効利用の可能性が示唆されるようなものを始め9、かなりhitします。その中で、やはり個人的に気になったのは、この菌の名前の由来となったスフィンゴ脂質です。グラム陰性細菌の特徴的成分であるリポ多糖を含まず、大量のスフィンゴ糖脂質を細胞外膜の主要成分としているそうです10(コリスチンはこのLPSがターゲットなので11、自然耐性なのも頷けるところかと思います)。細胞の構造に関して正書を読んでいると、このLPSがvirulence factorを担っているという記載や1、endotoxinはこれを指す12、という記載まであります。MandellにもLipid A+endotoxin+backboneで形成されるとあります。つまり、このLPSの代わりにスフィンゴ糖脂質で細胞外膜を形成しているため、virulenceが低い、という認識は少なくとも間違っていないかと思います。つまり、通常GNRのsepsisはLPSがTLRを介してNF-κBのカスケードが走り、サイトカインストームが起こるのが一連の流れですが13、それが起こらない代わりに、スフィンゴ糖脂質がCD1dを介してNK-T細胞を活性化してサイトカインを放出するメカニズムが示された論文があり14、LPS非依存性であることが見て取れます。
0: 臨床微生物検査ハンドブック第4版 三輪書店
1: Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases. 10th edition.
2: J Microbiol Immunol Infect. 2010;43(1):35-42. PMID: 20434121
3: Int J Infect Dis. 2022;119:172-177. PMID: 35398302
4: Perit Dial Int. 2008;28(5):547-50. PMID: 18708553
5: Saudi J Kidney Dis Transpl. 2015;26(3):567-71. PMID: 26022030
6: Ther Apher Dial. 2018;22(2):205-206. PMID: 29193656
7: Sci Total Environ. 2014;466-467:127-35. PMID: 23892027
8: Microbiol Spectr. 2022;10(3):e02694-21. PMID: 35467407
9: バイオメディア https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/8910/8910_biomedia_1.pdf
10: J Bacteriol. 1994;176(2):284-90. PMID: 8288520
11: Adv Wxp Med Biol. 2019;1145: 55-71. PMID: 31364071
12: 標準微生物学 第13版 p.71-74. 医学書院
13: Science. 1998:282(5396):2085-8. PMID: 9851930
14: Eur J Immunol. 2005;35(6):1692-701. PMID: 15915536
2026年 01月 06日
聞き馴染みのない菌が培養された場合2026年 Pseudoglutamicibacter cumminsii
もうここ2年でAIは完全に浸透してきて、もはやなくてはならない時代になりました。今回はPseudoglutamicibacter cumminsiiという菌が血液培養からGlobicatellaおよびBrevibacteriumと同時に検出された症例がありましたので、それを調べてみようと思いましたが、pubmedで10 hitにとどまりました。ただ2023のNew Microbe New Infectionでケースが出たと思ったら昨年スペインから臨床分離株116株の検討が実施されるという状況でもあり、元々の名前であるArthrobacter cumminsiiでも11 hitしかしなかったけども、環境菌としては古くから注目されていたようです。そこで、まあまとめてみようと思ったのですが、もうchappy使うとものの数秒でrefつけてくれてword fileにまでしてくれました。それを少しだけ推敲して添付したのが以下です。あとはこういうものにcolonyやGram stainの写真を貼って行って、blogをupしていき、AIを賢くしていくのが僕の仕事なのかもしれません。
菌の特徴
Pseudoglutamicibacter属は、従来Arthrobacter属に含まれていた菌群が、16S rRNA配列解析および化学分類学的特徴に基づき再分類され成立した属である。Pseudoglutamicibacter cumminsiiはその基準種であり、土壌など環境中に広く分布する。グラム陽性、好気性、カタラーゼ陽性のコリネフォーム様短桿菌で、ヒト臨床検体からは稀に分離される1,2。

Arrow: Pseudoglutamicibacterと考えられる。中心が膨らみ菱形を中心とした多型性をとる
Arrow head: Globicatellaと考えられる小型のGPC chain
MALDI-TOF MSによる同定が可能であるが、スコアが低値となる場合があり、分類学的に重要な症例では16S rRNA解析やゲノム解析が有用とされる1,3。
薬剤感受性
症例報告では、P. cumminsiiは第3世代セファロスポリン(セフトリアキソン、セフォタキシム)やアミノグリコシド(アミカシン)に感受性を示すことが多い。一方で、ST合剤、マクロライド系、ニトロフラントイン、ならびに一部ペニシリン系抗菌薬に耐性を示す例が報告されている4,5。


116株の詳細解析6
ドイツ・ルール地方の外来患者を対象とした後方視的研究では、2021年から2023年にかけて分離されたP. cumminsii 116株が解析された。
【検体分布】分離株の58.6%は尿、30.2%は創部由来であり、高齢者(特に60–74歳)および女性からの分離が多かった。75%は多菌種培養であり、単独分離は尿および関節液の2例のみであった。

共分離菌
尿検体ではEscherichia coli、Proteus mirabilis、Enterococcus faecalisが高頻度に共存しており、本菌が一次病原体というよりは、尿路・創部の微生物叢の一部として存在する可能性が示唆された。
薬剤感受性
βラクタム系抗菌薬(ペニシリン、βラクタマーゼ阻害薬配合剤、セフェム系、カルバペネム系)およびリネゾリドに対しては高い感受性が示された。一方、フルオロキノロン系ではMICのばらつきが大きく、耐性株の存在が示唆された。βラクタマーゼ産生は検出されなかった。
臨床的解釈
著者らは、本菌を「低病原性の日和見菌」あるいは「二次的コロナイザー」と位置づけており、分離時には臨床症状や共分離菌との関連を慎重に評価すべきと結論づけている。
臨床像
P. cumminsiiは一般に病原性は低いが、免疫抑制患者においては尿路感染症や稀な侵襲性感染症の原因となりうる。JCMに掲載された後方視的研究では、Pseudoglutamicibacterを含むMicrococcaceaeの血液培養陽性例の多くは汚染と判断されたが、悪性腫瘍や化学療法中の患者では真の感染症である可能性が示唆されている3,7。したがって本菌が検出された場合、検体の種類(無菌検体か否か)、菌量、単独分離の有無、宿主因子(免疫抑制、デバイス留置)を総合的に評価することが重要である。
なお、同時に検出されたGlobicatellaもTOF-MSや16S rRNAによって同定されるようになってきた菌で8、基本Streptococcus viridans と類似した臨床像を取り、過去誤同定されてきたと論文的には記載されています。それまではVitek2やAPIではStreptococcusだけでなく、Enterococcusなどと誤同定されていたようです。最大の相違点は10℃では発育しないのが、それら菌との違いのようです9。2010年以降で髄膜炎の報告が連続でなされました10,11。菌としてはG. sanguinisのほか、G. sulfidifaciensが臨床感染症症例で報告されています12。Viridans類似なのでshort chainのGPCです。薬剤感受性に関してはペニシリンやキノロンには感性であるものの、CTXなどのセファロスポリンに一貫性のない耐性を示す傾向にあるようで、empiric therapyで外す可能性が示唆されています9。

こういう症例を見ると、単菌種による感染と考えられていたものが、実は性状の似通った複数菌感染であった、という症例はそれなりに多いのではないか?と思う次第です。
なお、PseudoglutaminicibacterはMALDI score 2点超えているのはP. cummnsiiのみ、Brevibacteriumはtop hitから八番目まで全てB. ravenspurgense (top hit:2.240), Glibicatellaはtop hitはG. sanguinis(2.380)ながら、2.010-2.220まではG. sulfidifaciensという結果でした。
Ref
1: Int J Syst Evol Microbiol. 2016;66:9–37. PMID: 26612690.
2: Int J Syst Evol Microbiol. 2004. PMID: 15483390.
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